City Hallをどう発音する?句の強勢の重要性と前方強勢(前編)【イギリス英語の句の強勢辞典】

2010年に刊行されて以来、イギリス英語ファンに愛されてきた『キクタンBRITISH』が、2026年8月に改訂されました。この連載では『改訂版 キクタンBRITISH』(アルク)の著者・小川直樹先生が、本書の内容よりさらに詳しくイギリス英語の発音の秘密を深堀りします。イギリス人にも通じる、本当にイギリスらしい英語の発音の秘訣とは?ヒントはズバリ「句の強勢」にあるようです。

※この記事では、強勢(アクセント)の位置を分かりやすく示すために一部の英単語の文字の大きさを変えて表示しています。文字の大きさが正しく表示されない場合、English Jounalのオリジナルサイトをご覧ください。

とにかく発音解説にこだわった『改訂版 キクタンBRITISH』

『改訂版 キクタンBRITISH』(以下「キクBR」)の大きな特徴の1つは、他のキクタンに比べて発音解説が詳しい点です。English Jounalのインタビューでは、「単語集の皮をかぶった『日本一やさしいイギリス英語発音(以下「BE発音」)の教科書』」と評してもらいました。これはまんざらウソではありません。

ところで、英語の発音を扱った本の中には、「BE発音も学べます」のようなことを謳っているものもあります。でもBE発音って、そんな片手間で学べるようなものではありません。ちゃんとしたBE発音を身につけようとするなら、それを専門的に扱った教材を使ってほしいものです。

このキクBRでは旧版以来、発音に重きは置くものの、1)理屈と専門用語は最小限に抑える、2)実際にBEらしい音が出せるようになる、ことを目指してきました。今回の改訂ではそれに従いつつも、現在のBEの発音の実態を踏まえ、記述を大幅に改めました。この改訂版は、BEの発音教本としてもかなり中身の濃いものになったと思います。

イギリスの地名なのに…強勢を間違えるとイギリス人にも通じない?

しかしこの改訂版では、心残りの部分があるのです。それは、母音や子音は丁寧に扱えたものの、強勢についてはあまり扱えなかったことです。特にこのキクBRは使える単語集という役割があるだけに、もっと強勢について詳しく扱いたかったという思いが残るのです。

「あぁ、それ、わかる! だってマクドナルドって、そのままカタカナ発音で言うと全然通じないし。ちゃんとMcDOnald’sって言わないとダメですよね」なんて思った人もいるでしょう。

McDonald’sに限らず、英語では強勢位置を間違うと、まったく通じなくなります。僕自身、英国を旅行した際、駅の切符売り場の窓口で、地名が通じなかった経験が度々あります。例えば、湖水地方のWindermere。ちょっと長めなので、真ん中辺に強勢を置いたらいいんじゃないかと、WinDERmereと言ってみると、あえなく撃沈!聞き返されるばかりでした。その後、今度はネス湖を目指し、Invernessまでの切符を買おうと、同じく真ん中に強勢を置いてInVERnessと言ってみたら、これまた撃沈……(笑)。(※)

(※編集部注:オリジナルサイトではMcDonald’sのDo、Windermereのder、Invernessのverの部分が大きく表示されています。)

結局、どちらの場所も、強勢位置を変えながら発音してみたら、なんとか通じました。この旅行で、英語では強勢位置の間違いは致命的だ、と身をもって悟りました。そしてこの苦い経験があるからこそ、キクBRにはこの2つの地名を入れたのです(p.90参照。正しい発音もそこにあります)。

ただ、単語の強勢位置は間違うと通じなくなりますが、調べるのは容易です。だって、辞書を見れば、すぐ答えが出て来ますから。「あれ、だったらなんでキクBRで強勢についてもっと詳しく扱いたかった、なんて言うんですか?それにキクBRでは、見出し語には発音記号が付いていて、強勢記号だって付けてありますよね」と思われるかもしれません。

しかし、見出し語として取り上げられているものの、複数の単語からなる場合、その句(*)での強勢の法則性とか、例文や解説に出てくる句の強勢などについては、説明していません。改訂版では、できることならばそういったところまで説明したかったのです。

(*注:複数の単語からなり、ひとまとまりの意味を表す表現を「句」と呼ぶことにします。)

なぜって?BEマニアの皆さんならおわかりと思いますが、母音や子音だけ発音できても、それだけではBEらしくならないからです。

town centre、city hallの正しい発音は?

例えばイギリスの街にいれば必ず見かける、こんな表示がありますよね。

town centreやcity hallなどの表示は、英国の街のありふれた景色です。でもこれらを発音しようとすると、母音と子音だけじゃ解決できない問題が出てくるのです。そう、強勢の問題です。つまり、前の語と後ろの語で、どちらが強いんだという問題です。

ちょっと発音に詳しい人なら、こう思うでしょう。「これ、名詞+名詞の複合名詞だから、前が強いんじゃね?」と。

そんな人たちの中には、用心深い人もいるでしょう。「念のため、辞書を見てみようかな」と思って、英和辞典を見てみた。すると……

あれ、tówn cénter(日本の辞書ではたいていAE=アメリカ英語のスペリングです)、cíty hállと出て来るんですけど……。

強勢記号は、右上がり(´)なら第1強勢(ちなみに、右下がり(`)なら第2強勢)です。ということは、これらの句には第1強勢が2つあるということです。これ、どう読めばいいんですか?

そう、問題はここなんです。いくら母音や子音がBE風に発音できても、いくら単独の単語をBE風に発音できても、それだけでは発音は完璧にはなりません。世の中には、複数の単語からなる句というものが無数に存在するからです(さらには、この連載では扱いませんが、単語や句の集合体である文も無限にありますから)。これらの読み方もきちんとできないと、本当にBEらしい発音にはならないのです。

だからこそ、キクBRをお読みのBEマニアの皆さんには、キクBR内に現れる句について、どこが一番強いのかを正確に知ってもらいたいのです。そうすれば、あなたの発音は、よりリアルな、即戦力のBE発音になるはずです。

ちなみに、city hall、town centreの強勢の答えなんですが……。複合名詞のように前側が強いのでもなく、かといって、辞書のような2つ第1強勢が並ぶのでもないんです!これらでは、後ろ側の単語を強くするのが正解です(この答えはキクBR、見出し語番号042の解説(p.23)にも出ています。ちなみにこれは改訂版で追加した情報です)。

句の強勢の基本ルール

では、ここから句の強勢の規則を具体的に見ていきましょう。句の読み方には、2つの基本的な規則があります。①は上でも触れているので、知っている人も多いでしょう。

① 名詞+名詞=複合名詞 ⇒ 前方強勢(前側が強い)

② 形容詞+名詞 ⇒ 後方強勢(後ろ側が強い)

本連載ではこの規則に従って、キクBRの中の句を取り上げて説明していきます。なお、ここで扱う句とは、2単語からなるもので、名詞句に限定しておきます(が、そうでないものもときどき混ざります(笑))。また、世の中では、複合名詞は句とみなさないこともあります。しかしこの記事では、複合名詞も句の一種として扱います。

ところで、この連載記事では第1強勢が付く単語(2語のうちより強く発音される単語)を、視覚的にすぐわかるように、下の1)のように大文字で表記することにします。ただし、その単語がとても長い場合、2)のように第1強勢の位置をわかりやすくするため、一部を小文字で表すこともあります。

1) city CENTRE (325)

2) compreHENSIVE school (652解説)

カッコ内の数字は見出し語番号です。また「解説」とは、「見出し語ではなく、解説の中に出てくる句」ということです。

前方強勢の句

連載第1回目の今回は、①の前方強勢となる句を見ていきます。

名詞+名詞

まずは名詞+名詞の場合です。2つの名詞が組み合わさって、1つの表現を作る場合、その句は、上で既に出てきたように「複合名詞」とか「複合語」という名前で呼ばれます。

複合名詞は、例えばPOLICE carのように2語で表記したり、SUNglassesのように1語で表記したりします。1語にまとめるのか、分けるのかは表現によって違います。両方の表記がある場合もあります。ただいずれにしても、前方強勢であることに変わりはありません。

キクBRからの例を少しだけ見てみましょう。

  • CAR park (118)

CAR parkはまさに名詞+名詞の王道パターン。2語で表記するタイプです。意味はいうまでもなく「自動車公園」ではなく、「駐車場」です。

  • WHEELchair (223)

WHEELchairは、1語で表記するタイプの複合名詞です。ちなみに、wheelでは、口の動きに注意してください。日本語では「ホイール」ですが、BEでは[wíːl]です。[wiː]で唇は、日本語ではありえないほどの大きく動きます。まず[w]で唇を口笛を吹くくらいすぼめてから、[iː]で横方向に最大限に開きます。wheelを何度も練習すれば、顔痩せ間違いなし!(効果には個人差があります(笑))

  • POSTcode (380)
  • POSTbox (381)

POSTcode、POSTboxとも、postとcode/boxを1単語にまとめた複合名詞です。これらもWHEELchair同様、1語で表記する複合名詞です。なお、BEでの語頭の[p]は、日本語とは比べ物にならないほど強い破裂を伴います。

キクBRの見出し語には、複合名詞はかなりたくさんあります。例えば“Driving”のページ(p.108)だけでも大変な状況です。なにしろ8項目中5項目が複合名詞ですから。

  • ESTATE car (361)
  • MOTORway (362)
  • WINDscreen (366)
  • SPEED bump (367)
  • ZEBRA crossing (368)

複合名詞と思しきものは、とりあえず前方強勢で発音する、という意識を持っていてください。ただし例外(らしきもの)がけっこうあるのです。ここが難しいところなんですが、それについては第4回以降で扱います。

(後編に続く)

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Ogawa
小川直樹(おがわ・なおき)

英語音声学・英語学者。1961年東京生まれ。上智大学大学院言語学専攻博士前期課程修了。津田塾大学非常勤講師。1998年、イギリスのレディング大学で研修。立教女学院短大、聖徳大学の教授職を経て、2013年にコミュニケーションのコンサルティング会社 Heart-to-Heart Communications を設立し、代表取締役を務める。30年以上の女子大での教育経験と教員研修での指導経験を基に、英語発音を中心に、英文法・プレゼン技法などを一般向けに伝えている。『 耳慣らし英語リスニング2週間集中ゼミ 』(アルク)、『 イギリス英語発音教本 』(研究社)、『2週間で攻略!イギリス英語の音読ゼミ 』(コスモピア)、『 学校では教えてくれない 日本人のための英文法の授業 』(ナツメ社)など著書多数。

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