初心者のリスニング力が驚くほど上がるといわれる「シャドーイング」。でも、「難しそうでなかなか手が出ない」「ちょっとやってみたことあるけど、あまりに難しくて挫折」「効果がなかなか実感できなくて・・・」。そんなあなたの不安や悩みに、『はじめての英語シャドーイング』の著者、中林くみこ先生が答えます。これまで7000人以上を指導してきた経験から、シャドーイングの難しさとその理由、各段階での壁の克服法、さらにはその効果を実感するまでの練習の続け方を教えていただきます。
目次
シャドーイングはなぜきつい?
シャドーイングを試した人からは、「数分やっただけで疲れる」「口が回らない」「音声に置いていかれて、自分には向いていない気がする」という声をよく聞きます。
シャドーイングがきついのは、聞こえてきた音を瞬時に処理し、ほぼ同時に口から出すという、かなり負荷の高い作業をしているからです。
この記事では、シャドーイングを続けると何が変わるのか、そしてなぜあれほどきつく感じるのかを、耳・脳・口の働きから説明します。
シャドーイングは「聞こえた音をそのまま追う」練習
シャドーイングは、英語の音声から0.5秒ほど遅れて、影のようについていきながら発音するトレーニングです。単語だけでなく、音のつながりや消失、強弱、イントネーション、息継ぎの位置まで、聞こえた音をできるだけ忠実に再現します。


英文を見て自分のペースで読む音読や、音声を止めてから繰り返すリピーティングとは、脳にかかる負荷が違います。シャドーイングでは音声が止まってくれず、今聞こえた英語を処理して口に出している間にも、次の英語が耳に入ってきます。
耳・脳・口を休ませずに動かす負荷が高い練習であるため、シャドーイングは「英語の筋トレ」と呼ばれたりもします。
変化1 ばらばらだった音が単語として聞こえ始める
「単語も文法も知っているのに英語が聞き取れない」という人は多いですが、この大きな原因は、頭の中で想像している音と、実際に話される音の間にずれがあることです。
日本語は、一つひとつの音が比較的同じ長さ、同じ強さで並びます。一方、英語では子音が続いたり、単語同士がつながったり、音が消えたり弱くなったりします。さらに、意味の中心となる語は強く長く、文法上のつなぎ役となる語は短く弱く発音されるため、文全体に大きな「波」が生まれます。
例えば、カタカナの「ストライク」は5拍(手を5回叩くリズム)ですが、英語の strike は1音節(手を1回叩くリズム)です。頭の中で5拍の音を待っていると、実際の英語は一瞬で通り過ぎてしまいます。

シャドーイングでは、文字から想像した音ではなく、耳から入った音を自分の口で再現します。単語と単語の境目が分からなかった音も、何度も聞いてまねるうちに、一つのまとまりとして脳に登録されます。すると、以前は雑音のように通り過ぎていた音が、「あの単語だ」と認識できるようになります。
変化2 英語を処理する速度が上がる
リスニングは、大きく二つの段階に分けられます。最初は、聞こえてきた音を単語や文として認識する段階。次は、認識した言葉の意味を文脈に沿って理解する段階です。
最初の「音を言葉として認識する」処理に時間がかかると、意味を考える余裕がなくなります。一つの単語に引っかかっているうちに、音声は先へ進んでしまいます。
シャドーイングでは、聞こえた音を覚えてから言う時間がありません。耳から入った音を瞬時に処理し、口から出しながら、次の音も聞き続けます。自分のペースではなく、英語のスピードとリズムに乗るしかないため、脳はフル回転します。
練習を重ねると、音を単語として認識する処理が少しずつ自動化されます。音の認識に使っていた力を意味理解へ回せるようになり、英文を頭から処理しやすくなるのです。
変化3 「英語の口」が育っていく
シャドーイングで効果があるのはリスニングだけではありません。日本語と英語では、舌や唇の動かし方、息の出し方、喉の使い方が異なります。発音の方法を頭で理解していても、英語を話すための口の動きがまだ自動化されていないため、速い音声に合わせようとすると口が動きません。
シャドーイングでお手本の強弱やリズム、イントネーションまでまねていると、口の筋肉が英語の動きを少しずつ覚えます。また、「読めば分かるけれど会話では出てこない」という単語やフレーズも、正しい音とリズムのまとまりで練習することで、口から出しやすくなります。
初心者にとってのシャドーイングは「英語耳」を作る土台であり、ある程度聞き取れる人にとっては「英語の口」を作る練習になります。
きついのは、耳・脳・口を同時に使っているから
シャドーイング中は、音を聞き分け、瞬時に処理し、口を動かして再現する作業を続けているため、数分で疲れるのは自然なことです。聞き取れない箇所がある、途中で音声に置いていかれる、口がもつれるといった反応も、「まだ自動化できていないんだな」と受け止めてください。
ただし、苦しければ苦しいほど効果が高いわけではありません。スクリプトを読んでも分からない単語が多い、音声が速すぎて一語も拾えないという素材では、負荷が高すぎます。シャドーイングは、読めば辞書なしで9割以上理解できる素材から始め、1日15分程度でも十分です。
『はじめての英語シャドーイング』では、日本人が特につまずきやすい音の連結・消失・弱形・フラッピングなどを、短い英文から段階的に練習できるようにしました。いきなり長いニュースやドラマに挑戦するのではなく、まずは耳と脳と口に「英語の音の型」を覚えさせるためです。
次回は、音声についていけないとき、教材をどこまで易しくし、練習をどう分解すればよいのかを具体的に紹介します。
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