TOEIC指導の専門家・ヒロ前田さんが、学習者の悩みに答える連載「TOEIC学習お悩み相談室」。今回は、「韓国で売られているTOEICの過去問を買った方がよいのか」という相談を取り上げます。過去問にはどんな価値があり、一般の学習者はどのように考えればよいのでしょうか。
目次
今回の相談
韓国で発売された「過去問」を解くよう知人が勧めます。日本の問題集だけでなく、それも買った方がよいでしょうか。
――会社員(30代・女性)
まず確認したいこと
自分の目的を先に考える
日本のTOEIC対策本に掲載されている問題は、基本的に「過去問」ではありません。公式問題集に掲載されている問題も、実際に過去に出題された問題そのものではなく、本番に近い形式で作られた問題です。
そのため、「韓国で過去問が売られている」と聞けば、気になるのは自然なことです。
ただし、買うかどうかを考える前に、まず確認したいことがあります。
それは、自分が何のためにその教材を使いたいのかです。
例えば、次のような点を考えてみてください。
- 韓国で売られている過去問を買うメリットは何か
- デメリットは何か
- 自分は何を実現したいのか
- その目的に、過去問はどう役立つのか
- すでに持っている教材を十分に使えているのか
「知人が勧めたから」「本物らしいから」という理由だけで買っても、十分に活用できなければ意味がありません。
教材は、買うことよりも、どう使うかが大切です。
立場によって答えは変わる
この質問への答えは、その人の立場によって変わります。
もしあなたがTOEIC対策本を執筆する著者であれば、過去問を買う価値は大きいでしょう。本物のテストを研究することで、より本番に近い模試や、効果的な対策法を作る手掛かりになるからです。
TOEICを教える講師であっても、買う意味はあります。テストの傾向や英語の質を知ることは、指導するうえで重要です。
また、教材制作に関わるライターや問題作成者であれば、研究材料として役立つ可能性があります。
一方で、あなたがスコアアップを目指す一般の学習者であれば、話は少し違います。
一般の学習者にとっては、まず日本国内で手に入る公式教材を使い切ることが先です。
国内で買える公式教材や問題集を十分に活用できていない状態で、韓国の過去問に手を伸ばしても、学習効果が大きくなるとは限りません。
学習者が考えるべき教材選び
まずは日本の公式教材を使い倒す
スコアアップを目指す学習者であれば、まず日本国内で発売されている公式教材を使うことをお勧めします。
1冊を選び、「この本については誰よりも詳しい。何を質問されても答えられる」と思えるくらいまで使ってください。
ただ1回解いて、答え合わせをして、解説を読んで終わりではありません。
例えば、次のように使います。
- 間違えた問題を解き直す
- 正解の根拠を本文や音声で確認する
- 選択肢がなぜ不正解なのかを説明できるようにする
- リスニング音声を繰り返し聞く
- スクリプトを見ながら音読する
- 文書や設問の語彙・表現を確認する
ここまで取り組むと、1冊から得られるものはかなり多くなります。
教材は、量を増やす前に、1冊をどこまで深く使えるかが重要です。
韓国の過去問を意識するのは、その後でも遅くありません。
過去問に飛びつく前に確認する
韓国で発売された過去問には価値があります。
ただし、国内の公式教材を十分に使い切っていない段階で、「過去問だから」という理由だけで買うのは、優先順位としては高くないでしょう。
新しい教材を買うと、勉強が進んだ気分になることがあります。しかし、実際には、教材を増やしただけで学習量が増えていないこともあります。
大切なのは、今ある教材から何を吸収できているかです。
過去問を買う前に、まず手元の教材について確認してみてください。
- 収録されている問題をすべて解き直したか
- 間違えた理由を説明できるか
- リスニング音声を何度も聞いたか
- Part 3・4のスクリプトを読んで理解したか
- Part 7の本文を根拠まで確認したか
- 語彙や表現を復習したか
これらがまだ不十分なら、韓国の過去問よりも、手元の教材を使い直す方が効果的かもしれません。
韓国の過去問を使う場合の注意点
音声や解説に注意する
それでも韓国で発売された過去問を使うなら、いくつか注意点があります。
1つ目は、リスニングセクションの音声です。
教材によってはCDが付属しておらず、音声をダウンロードして使う形になっていることがあります。その場合、ダウンロード用のサイトが韓国語で運用されている可能性があります。
韓国語が分からない場合は、音声の入手や設定で手間取るかもしれません。
2つ目は、和訳や日本語の解説がないことです。
Part 3、Part 4、Part 7では、正解の根拠となる情報が示されていれば、韓国語が読めなくてもある程度使えるかもしれません。
しかし、文法や語法の解説は、読んで理解するものです。韓国語を読めなければ、解説を十分に活用できない可能性があります。
英語部分は使えても、解説まで十分に使えるとは限らないという点は、理解しておく必要があります。
日本のテストにそのまま出るとは考えない
もう1つ注意したいのは、韓国で発売された過去問に収録されている問題が、そのまま日本のテストに出るとは期待しないことです。
TOEICは公平性を保つ必要があるテストです。特定の国で発売された問題を研究した人だけが有利になるような運用は、基本的には期待しない方がよいでしょう。
ですから、「この問題が日本でも出るかもしれない」と考えて買うのは危険です。
韓国の過去問を使う価値は、出題の再利用を期待することではありません。
価値があるとすれば、本物のテストに近い英語の質に触れられることです。
語彙、文書のトピック、ストーリー展開、選択肢の作られ方など、本番に近い英語を学ぶ材料として見るべきでしょう。
英語部分の質を活用する
韓国の過去問を使うなら、最大のメリットは英語部分のクオリティーです。
本物に近い問題であれば、文書の自然さ、設問の作り方、選択肢の引っ掛け方など、学べることは多くあります。
ただし、そのメリットを生かすには、英語部分にしっかり向き合う必要があります。
韓国語が読めないからといって、解説を日本語に訳してもらうことばかりに意識が向くと、本来の価値を生かしにくくなります。
大切なのは、英文を読み、音声を聞き、正解の根拠を確認し、自分の弱点を見つけることです。
過去問の価値は、英語部分の質をどれだけ学習に生かせるかで決まります。
国内の公式教材を十分に使い切ったうえで、さらに本番に近い英語に触れたい。そう考える人にとっては、韓国の過去問を検討する価値はあるでしょう。
一方で、まだ手元の公式教材を十分に使えていないなら、まずはその1冊を徹底的に使うことをお勧めします。
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